【彩りの影のソウギョ②】







【彩りの影のソウギョ②】


ずっと追い求めていた。

馳せる想い。

届かぬ祈り。

向かい風ばかりのそんな年に吹いた一陣の追風。

背中を押されど、葛藤で竦む足。

託された想いにこたえる為に全身全霊で今竿を振る。


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池を彩る錦鯉の影になっていた「黒い鯉」の正体は、ずっと私が追い求めていた魚のひとつ「ソウギョ」であることが分かった。



ソウギョとは「草魚」と書き、草食性が強い巨大魚だ。


その唇の感覚は敏感で、ソウギョを釣る際に葦の葉に針を付ける「草針」という仕掛けで釣る方法があるが、そのさいに針寸前まで草が齧られ、ハリまで口に入らない・・・


そのくらい感覚が鋭く神経質な魚なのだ。


そんなソウギョは私が撒いたパンをつついていた。


そして驚くべきはパンを咥えたまま泳ぎ、パンの耳は食べず白い生地だけを食べていた事だ。


そんな芸当は鯉には決してできない。


鯉とは圧倒的に別物なのだ。



このソウギョをフライで釣りたいと思った。


しかし、この神経質な魚に私が作った「マチャパン」は通用するのだろうか。


マチャパン本来の耳があるバージョン。
DSC_0896.JPG


これじゃダメだ・・・



耳がない千切りパンバージョンをチョイスした。
マチャパン ちぎりパンモデル.jpg


見た目だけならパンに限りなく近いが、ソウギョの感覚に勝てるだろうか・・・


もし、ソウギョの感覚に勝てたなら・・・


マチャパンは本当に素晴らしい「パンフライ」だと証明できるだろう。



・・・



いざタックルを準備・・・


図1.png


そして決戦。

図3.png

プレゼンテーションはうまくいった。


ティペットのラインの膜も消せた。



そして、来た・・・




何度も心の中で繰り返した言葉・・・「頼む・・・来い。」



そして、ソウギョはマチャパンを咥えた!!!!!

案の定マチャパンを半分だけ咥えて泳いでいるのだ・・・




咥えたが・・・ここでアワセたところで針が口に入っている各省がない!


吸い込め!


半分だけ口から見えるマチャパンが消えるのをずっとずっと待っていたが、マチャパンは吐き出された。



・・・負けた。



いや、迷わず咥えた。


まだ希望はある。



二度目のプレゼン。



自分から遠い位置のソウギョを狙った。

ソウギョ フライフィッシング.jpg

鼻先約5m



そのまま泳いで来れば目に入る位置にプレゼンできた。



そして、ソウギョが一直線にゆらゆらと体をくねらせマチャパンに引き寄せられるように寄ってきた時だった。



必死な祈りが通じたのか・・・



マチャパンは再び咥えられ・・・そして・・・スッ



消えた!?



ビシィ!!!!

図4.jpg

目の前に見ていた景色からマチャパンが消えるこの一瞬に焦点を当てていた為、体が勝手に反応した!


天高く振り上げたロッドから伸びるラインの先にはずっしりとした重みが手に伝わる。



感極まり言葉がなかった。



寄ってこい・・・


寄って来い・・・・


図2.jpg


・・・

図1.jpg



どれだけの時間ファイトしたかなんてアドレナリン出まくりで覚えてないさ。



ただ言える事は・・・


今目の前にその追い求めていた魚がいるという事。

図5.jpg


図7.jpg



やったぁああああああ!!!!

DPmdulAU8AEdfX6.jpg


追風に背中を押され、竦む足が一歩前に出た。


その一歩は今まで踏み込めずにいた貴重な一歩だ。


フライで釣れたという事もまた大きな意味を持っていた。

改良したパンフライじゃなければ確実に釣れなかったと思うほど神経を使った釣りだった事を振り返れば、それだけ「マチャパン」に信頼を持っていたという事でもある。



失敗をくり返し仕上がったフライだからこそ、自信をもって行けた。
その結果、最高の魚にめぐり合わせてくれたのだ。

池の彩りに隠れてひっそりと忍んでいた黒い魚は私が追い求めた最高の魚だった。



私はこの日、それ以上竿を振らなかった。



この追風がもたらした一歩は、消して忘れない。




2017.11.25
ロッド:フライロッド #6
リール:#5/6
ライン:WF-6-F
リーダー:3X
ティペット:6lb.フロロ
フライ :パンフライ(マチャパン)
釣果  :ソウギョ1匹 

【関連】
彩りの影のソウギョ①