【マハゼが食べたくて…】







【マハゼが食べたくて…】


風に揺蕩う草花が何を思ってそこに佇むのかはわからないが、雨風に耐え忍ぶその様子は力強く美しく見える。

「ただそこにあるだけ」の様に見えるモノも、見方を変えると違った一面が見えるものだ。



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仕事の終わりに少し時間ができた。



「釣り」というのは色んなジャンルがあれど、私がその中でも好きなジャンルは「フライフィッシング」である。


しかし、フライフィッシングが特別素晴らしい等と思っているわけではなくて、どの釣りも、その釣りその釣りの面白みや深みがあって、どれが優れているか等馬鹿げた議論をする気などさらさらない。


現に私がこの日チョイスした釣りは「餌釣り」である。


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何を狙っているかというと・・・




ハゼだ。



それは先日、アドバイザーのミスターから送られてきた写真。

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ミスターから「爆釣だよ~♪」とラインが送られてきて、指をくわえてその写真を見ていたのさ。



しかし、ミスターの優しい所は、その釣った魚をこっそり私の家に置いて行ってくれた事だ。


私は仕事終わりに疲れ切った体で家に着くと、玄関の前においてあるクーラーボックスを見つけ、中をみると先ほど釣り上げたであろう新鮮なマハゼが大量に…


そして、私は速攻唐揚げにして食したのだ。


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これが美味い!


美味すぎる!!!



片栗粉まぶして揚げたマハゼを醤油とマヨネーズで食べ、勢いよくキンキンのビールを流し込む!!!




息出来ない程美味い!!!!





そして、久々に酒を飲み気分が高揚したが、翌日もうマハゼが無い事に失望し、私は自ら調達しにきたというのが、今回この餌釣りにいたった経緯である。



…だいぶ長い前置きである。








だがしかし…






釣れない。





まるで釣れないのだ…




根掛かりはするし、得体のしれない何かにイソメが食いちぎられるし、私の求める激うま生物「マハゼ」がその姿をまるで見せようとしない。






どういうことだ…





そ・・・そいういう事かミスター!!!!!




さては!!!




やったな!?!?!?!




釣りきっちまったんだな!?!?!?!?




じゃないと俺がマハゼを一匹も釣れないなんて事が起こるわけがない!!!





ミスター!!!いい加減にしてくださいよ!
自然と遊ぶ以上、自然に感謝し必要以上には持ちかえらないというルールが…暗黙のルールがあるでしょうよ!
私にくれたマハゼは「すべて」ではなく、極々極一部の物凄く少ないほんの一部だったのですね!?!??!


「もう行ってもいないから…」というお詫びだったに違いない…





…と、被害妄想を一人で繰り広げ、何となく釣れない自分を慰めて場所を移動した。



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あとは待つだけだ。



この広い港ならマハゼが釣りきられることなんてないだろう…(まだ被害妄想は続いていた)




待った…



それはそれは待ち焦がれた…



バイト代が入るや否や欲しかったモノを迷わず買ってしまい、一週間後にはスッカラカン…
友達になんでラーメン奢ったんだろうとか、過ぎた事を言っても仕方ないのに、いつまでも後悔の念を抱き、残り三週間をほぼ極貧生活を強いられた高校生が、昼飯にもっていった弁当を早弁してしまった結果、夕方3時にはすでに腹ペコでおやつを買うにも買えず、そのままバイトに行かねばならないという絶望の中、バイト終わりの10時に出される賄い飯を心のそこから待ち焦がれている男子学生の様にその時を待った。



はたまた、5月のゴールデンウィークが終わろうとしている頃、もうすぐ連休が終わる事に失望した小学生が、次の大型連休である「夏休み」に想いを馳せるも、その「夢」はまだ果てしなく遠く、伸ばした両手も届かない幻見ているかのような精神状態で、せめて連休後に訪れる最初の土日はいつかとカレンダーを見るが、しっかりと学校の日数が5日間あり、「おいマジかよ~…」と逃げる場所を失った瀕死の状態で、さらに宿題がまだ終わっていないという現実を突きつけられるが、もうそのころには「宿題はやったけど忘れました」作戦を練り上げていたために、そんな事はどうでもいいと投げだしながら、頭のどこかですでに次の休みを待ち焦がれている小学五年生くらい待った。



…待ち過ぎた。





風が冷たい港に立ち尽くす私は、まわりから見たら微動だにしない「枯れた木」くらいに思われていたかもしれない…



鈴が鳴ったが…風だったのかもしれない…




しかし、それは風ではなくあきらかに生命反応!




つつつつつつつ・・・ついに来たのか!!!




マハゼ!!!!!!!!!





そう!




私はお前に会いたかったんだよ!!!





この瞬間をどれだけ待ちわびたか!!!





やっと会いに来てくれたのか!!!!





どれ!




今引き上げてやるよ~!!!!!!!











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(; ・`д・´)







えっと…





「あ、いえ・・・違います… あ、はい。ウチは佐藤じゃないです… ええ、あ・・・はーい・・・ガチャ。」






来るところ間違ってますよ…とそれとなく伝えたが、このモノはその場でジタバタとして一向に帰ろうとしない。



もう駄々こねないで帰ってくださいよ…




貴方は呼んでませんよ…




だいたいあなたあまり美味しくないじゃない!



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何よ…



何よその顔…


あ…おい!ファイティングポーズとるんじゃないよ!!



私は争う気はないんだよ!!!





なに?




美味いから食ってみろ?




その手には乗らないよ




大体お前を食べて美味しいと思った事が私はまだないよ。




嘘だと思って食ってみろって?


どうせマハゼは釣れないから?



・・・ぐぅの音も出ないよ。



「ぐぅ~(お腹の音)」





・・・。





魔が差した。





私はこの「シャコ」と呼ばれているこのモノをお持ち帰りして食ってみる事にした。



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大体こういった甲殻類はマヨネーズ付けて食べればなんだって美味いんだよ!





パクっ!





・・・美味しいのはマヨネーズだけだった。











秋風が冷たく身体を冷やし、人肌恋しくなる季節…


待ち焦がれたあの時間と、シャコの殻をむいた際に負った手の傷を癒す何かを…



僕は探し続けていた…













2018.11.13